好きなものが自分を支える  葛飾北斎

昔働いていた職場の男性が、今月で退職すると連絡がきました。

彼は今年で60歳。私の在職中から「早く辞めたいけど年金支給まで頑張る」と言っていましたが、やっと今月で終われるそうです。おつかれさまでした。

 

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私の好きな日本の画家に葛飾北斎という人がいます。

没後も世界中で個展が開かれるくらいのスーパースターです。

彼の描くものが大好きなのはもちろん、彼の生き方も両方ひっくるめて惹かれます。

 

酒も煙草も美食も身なりも興味なし。ただ、絵を描き続ける人。

勝川春朗として世に出てからも、自分の力を試すため画号(ペンネーム)を30回も変えて描き続けます。

79歳のとき火事に遭い、すべての写生帳を無くしたときも、絵筆一本残っていればいい、と気にしない。

晩年は小布施に住み込み描き続けます。80代後半です。

とにかく描くことに対する執念が尋常じゃない。

無愛想で金に無頓着。食事も作らず食器も無い。

生活はメチャクチャだったみたいですが、きっと生活すら「描ければ」どうでも良かったんでしょう。

 

富嶽百景』を完成させたときのことばです。74歳。

私は6歳の頃から、ものの姿を絵に写してきた。50歳の頃からは随分たくさんの絵や本を出したが、よく考えてみると、70歳までに描いたものには、ろくな絵はない。

73歳になってどうやら、鳥やけだものや、虫や魚の本当の形とか、草木の生きている姿とかが分かってきた。だから80歳になるとずっと進歩し、90歳になったらいっそう奥まで見極めることができ、100歳になれば思い通りに描けるだろうし、110歳になったらどんなものも生きているように描けるようになろう。

どうぞ長生きされて、この私の言葉が嘘でないことを確かめて頂きたいものである。

 

『天があと10年の間、命長らえることを私に許されたなら』と言い、しばらくしてさらに、『天があと5年の間、命保つことを私に許されたなら、必ずやまさに本物といえる画工になり得たであろう』

 

彼には描くこと以外どうでもよくて、描き終わったらゆっくりしたい、とか無いんだよ。世間であれだけ評価されてても自分の中で完成できずに今世が終わってしまった。描きたくて学びたくてしょうがない、そういうものが毎日に有るか無いかで、人生はだいぶ違う気がします。

画狂老人卍、という画号のとおり 描くことへ幸せに狂ってる老人です。

描くことが生きることであり、全身全霊を込め描く絵だからこそ、場所や時代を超えて人を感動させます。

 

池袋大勝軒の店主が無くなったときも同じことを思った記憶があります(ラーメンね)。一生働けるって幸せなことなんじゃないかい?

私たちが老人になることは、年金支給もきっと無いでしょう。

それ以上に、情熱をかたむけられるものというのは人生のエンジンになり得るのです。